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形式と解釈のインターフェース

金子義明(東北大学教授)

 言葉には、語順をはじめとする文の形式上の特性と意味解釈がからみあう現象が、数多く存在します。例えば、次の現在完了形の文には二つの解釈が存在します。

(1) John has lived in Boston for five years.

文末の前置詞句for five yearsは「5年間」という期間を表します。一つの解釈では、「5年間」は過去の不特定の期間を表し、「過去のある5年間にボストンに住んだ(ことがある)」と解釈されます(経験の解釈)。もう一方の解釈では、現在時点を期間の一端(この場合、終端)とする「5年間」を表し、「ボストンに住んで(現在まで)5年になる」と解釈されます(継続の解釈)。  このように「for + 名詞句」で期間を表す前置詞句には、特定の時点によって期間が特定される「特定的解釈」と、特定されない「非特定的解釈」が存在します。ところが、前置詞句が文頭に置かれると、特定的解釈のみが存在し、多義性が消失します。

(2) For five years Martha has lived in Boston.

文頭のfor five yearsは、現在時点までの5年間の解釈(継続の解釈)のみが可能です。  さらに、前置詞句の位置は、「結果」の読みにも影響を与えます。

(3) A:  We need someone who remembers where that restaurant is.
      Anyone who has lived in London for five years or longer
      would remember it.
    B:  Mary has lived in London for five years.
    B’: For five years, Mary has lived in London.

 この会話で、話者Aは、ロンドンに住んで(現在までに)5年以上となり、その結果、問題のレストランの場所を記憶している人を探しています。BとB´の返答は、いずれも継続の解釈が可能です(特にB´は継続の解釈のみ)。しかし、前置詞句が文頭に生起しているB´の文には、5年以上継続して住んでいる結果としてレストランの場所を記憶しているという読みが許されず、Aの質問に対する返答としては不適切となります。

 このように、文の形式と解釈が影響を及ぼしあう現象を、統語論・意味論インターフェース現象と呼びますが、このような現象が生ずる要因を解きほぐして、そのメカニズムを解明していくのも英語学・言語学研究の重要なテーマであり、精力的に研究が進められています。

金子義明先生の最新刊

2008年7月18日 掲載


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