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言語学と言語教育:話すのに文法って必要?(Part 1)

長谷川信子(神田外語大学教授)

 30歳以上の人(ですから、ほとんどの教員)にとっては外国語(英語)を学ぶことの大きな部分は「文法を学ぶこと」だったことでしょう。それが、ここ10年位の間に(具体的には、学習指導要領の改訂と関連して)「外国語を学ぶこと」イコール「外国語使うこと・話せるようになること」というようにシフトしてきています。実際、「文法訳読法」により英語を学んだ私も、大学で初めてネイティブの先生の授業があって、そこで「英語が通じた」ことから来る感激は、テストで良い点を取ることとは全く次元の異なる楽しさ・嬉しさでした。

 文科省は、2011年から全国の公立小学校でも小学校5,6年生に「正課」として英語を導入する方針を打ち出しました。そして、すでに多くの小学校で英語は何らかの形で導入されています。そうした英語の導入の特徴は(そして、最近の中学校での教科書も大体同じような観点が打ち出されていますが)「英語を使う場面の設定」に従って必要な語彙と表現を導入すること(いわゆる、コミュニカティブ・アプローチ)で、場面に関係なく「文法」を教えることはしない、という方針が貫かれています。つまり、英語を使うことの楽しさから入り、文法は二の次、というわけです。

 話は飛びますが、私は、日本の大学へ戻って来る前に、アメリカの大学で日本語を教え、年度を違えて全く異なるアプローチで日本語を導入した経験を持っています。一つは、いわゆる「文法訳読法」に近いもので、「あなたは何を食べますか」「私はお寿司を食べます」など、省略が多い日本語では実際にはほとんどその通りには言わないような、しかし文法規則に則った表現を、英語への訳読を意識して導入する方法。もう一つは、話すことを中心に、終助詞の「よ、ね、か」を使って、「食べますか」「食べますね」「食べますよ」など、主語や目的語を省いても会話として成り立つ表現から教え、単語が足りないなら「studyしますか」のような英語を交えることも許すという導入法です。その結果、1年後には、全く異なるタイプの学生が育ちました。前者の学生は、文法に意識が集中するせいか「話すことは苦手」、でも、作文や読解へはスムーズに移行してくれました。後者の学生は、たった1ヶ月余りで、電話で話すことも怖がらない、文法の授業でも、とにかく日本語でチャレンジしてみる、という「話すのが大好き」な学生となりました。ただ、彼らは、2年次、3年次で、新聞などを読む、高度な作文を書く、という課題に対応するためには、その時点でかなり意識的・体系的に文法を学び直すことが必要でした。

 さて、日本での英語教育、教師は、どのような学生を育てたいのでしょう? そして、学生は、どのような英語の使い手になりたいのでしょう? Part 2では、英語教育と文法、言語学の観点から、この問いを考えてみたいと思います。

長谷川信子先生の最新刊

2008年8月15日 掲載


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