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複合語の構造と意味から生み出される面白さ

竝木崇康(茨城大学教授)

 単語と単語をつなげて別の単語にしたものを「複合語 (compound)」と言いますが、英語にも日本語にも複合語はたくさんあります。複合語は種類も多いので、何らかの分類をすることが必要ですが、ここでは次の2つを区別してみましょう。

第1は英語において動詞の要素と他の品詞の単語が作るもので、letter writing(手紙を書くこと), sight seeking(観光), city planning(都市計画)のようなものです(N-Vingの型)。ここでは動詞の要素の前に名詞がある例をあげていますが、それらの名詞は文法的にその後の動詞の目的語と解釈できるもので、これらの複合語はいずれも行為(〜すること)を表わしています。第2は、動詞の要素が関わらずに、どちらも名詞からできているもので、たとえば bedroom(寝室), door knob(ドアのノブ), eggplant(ナス)などです(N1+N2の型)。こちらのグループでは動詞が関わらないので、2つの要素が文法的に限定されることはなく、2つの名詞の間の意味関係はさまざまなものになります。bedroomでは「bedを置くための room」、door knobでは「doorの一部であるknob」、eggplantでは「eggに(形が)似ているplant」です。

 同じような区別は日本語でも見られます。「魚釣り」、「酒造り」、「鹿狩り」、「稲刈り」などでは、最初の名詞がその後の動詞の連用形(名詞扱い)の目的語になっており、複合語全体が行為を表わしています。一方、「腕時計」、「あんパン」、「きつねうどん」などの例では、「腕」と「時計」、「あん」と「パン」、「きつね」と「うどん」の間の意味関係はさまざまです。さらには「腕時計」、「砂時計」、「花時計」などでも最初の名詞と2番目の名詞(「時計」)の関係はいろいろです。

 それでは、右側に連用形が現れていますが「鯛焼き」、「タコ焼き」、「イカ焼き」のような複合語はどうでしょうか。これらの例は、予測されるような行為の意味を持つものではありません(「イカ焼き」だけは少し可能性があるかもしれませんが)。むしろ、「何らかの焼かれたもの」という産物の意味を持っています。そのために「焼き」が行為を表わさず、むしろ「時計」や「パン」のような具体物を表わしているので、「焼き」とその前の名詞の意味関係がさまざまなものになるのでしょう(「鯛に似た焼かれたもの」、「刻まれたタコが入っている焼かれたもの」、「イカそのものが焼かれたもの」)。そのうえ「鉄板焼き」、「しょうが焼き」、「大文字焼き」、「益子焼」、「九谷焼」となると、さらに多様な意味関係が現われてくるのは大変興味深いことです。

 このように複合語の構造と意味の間には規則的な部分と多様な部分がからみ合っています。このからみ合いを解きほぐしていくことが語形成(派生形態論)の研究の面白さの1つだと思います。

竝木崇康先生の最新刊

2010年2月19日 掲載


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