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「英語のアクセントの法則に魅せられて」

児玉 一宏(京都教育大学准教授)

私がまだ言語学を専攻していない法学部の学生であった頃のことです。ある英語の授業を通して,M. ハレとS. J. カイザーという言語学者の論文と出会い,英語のアクセントの位置を決定する一般的な法則が存在することを知りました。当時,丸暗記するしかないと思っていた音韻の世界にも整然とした法則が存在することを知り,言語学の面白さに魅せられました。基本的な法則を理解することでより正確な英語発音の習得の手助けになると実感したこともあり,言語の仕組みやその背後に隠されている法則をもっと知りたいと思うようになったことを今でも覚えています。

当時の私にとって衝撃的であったのは,「英語の単語のアクセントの位置は、語の後ろから見ることによって規則性を捉えることができる」という見方です。後ろから見るという分析法は斬新でした。専門的な説明の詳細は省略しますが,3音節語economy とその派生語economicalを取り上げて,具体的にお話しすることにします。

economy に対してeconomical では,アクセントが明らかに1音節後ろへ移動しています。アクセントは,economy では前から2番目の母音[音節]に置かれ,economicalでは前から3番目の母音に置かれています。しかし,視点を変えて語の後ろからアクセントの位置を眺めればどうなるでしょう。いずれの語も,アクセントは「後ろから3番目」の母音[音節]にあることが分かります。次のoriginと originalの例でも同様の結果になります。

これらの例からも明らかなように,例えば -(ic)al, -(i)an, -ityなどの派性語尾が付いた語ではアクセントの移動が生じています。しかも,アクセントは後ろから3番目の母音[音節]に来ています。これは驚くべき現象であると言えます。 実は,英語の単語のアクセントは,一般にある条件が整えば,後ろから3番目の母音[音節]に来る場合が多いことが知られています。簡単に言えば,最後の母音と後ろから2番目の母音がいずれも短い母音で,2つの母音の間に子音が最大で1個しかないという条件が整えば,アクセントは後ろから3番目の母音[音節]に来るのです。例えば (2b) のor-ig-in-al では,最後の母音 (a) と後ろから2番目の母音 (i) はいずれも短い母音であり,2つの母音の間には子音が1個 (n) しかないため,アクセントの位置は後ろから3番目の母音[音節]という結果になるわけです。 ところが,同じ3音節語でもagenda, veranda, establishなどの語の場合には結果は異なります。最後の母音と後ろから2番目の母音がいずれも短い母音であっても,2つの母音の間に子音が2個存在しています。このような場合,後から2番目の母音[音節]にアクセントが来るのです。

最後に,未知の語に出会っても、辞書を引いてアクセントの位置を確認し機械的に覚えるだけでなく,アクセントの位置を法則に基づいて予測し,発見的に学習する経験を積めば,更なる探究心が育まれることでしょう。言語学という学問を通して,言葉の不思議,言葉について思索することの楽しさを学んでもらえることを期待します。

児玉 一宏先生の最新刊

2010年10月1日 掲載


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