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泣いていても、怒っていても、コミュニケーションはスマイリー(smiley)!

淺間正通(静岡大学教授)

 昨年(2005年)の9月、かねてからのフィンランド研究が縁で、フィンランド第2の都市タンペレに学舎を構える、タンペレリュセオン高等学校での講演機会を得ました。

 日本の情報教育事情を中心に話を進めていたところ、ふとした脱線話から日本の若者達が操る顔文字にも話題が及びました。そして、その一例を示そうと、「笑顔」を表す顔文字 (^_^) を板書してみたところ、会場内にどっとどよめきが起きたのです。それもそのはずです。彼等が笑顔を指し示すのに用いる顔文字 :−) と著しくかけ離れていたのですから。縦文字文化と横文字文化の違いに基づく視覚認知の差と言えばそれまでですが、それにしても目元で表情をとる日本式と口元で表情をとる欧米式がこんな形で文化差を生じさせているのは実に興味深いところです。

 ちなみに、欧米式で「泣き顔・怒り顔」(sad or angry face)を表すと :−( となります。もちろん、その他顔文字の種類は豊富ですが、なぜか欧米では一様に「スマイリー」(smiley;ニコニコ顔)と呼び称されているのはどうしてなのでしょう?もう4年近く前に遡るのですが、2002年9月20日付けの新聞各紙に、共同電として「『顔文字』がハタチの誕生日を迎える」と銘打った記事が掲載されていました。それによれば、1982年9月19日、当時IBMのコンピュータ技術者であったスコット・ファールマン氏が、記号のコロンと横棒、丸括弧の右半分を使って、笑顔に見える「スマイリー」を初めて電子メール上で提案したのが発端としています。もし、先に紹介した「泣き顔・怒り顔」が提案されていたとしたら、どう呼んでいたのだろう、と興味を誘われる次第です。

 ところで、そのスマイリーに関してですが、筆者が2003年に日本とフィンランドの高校生を対象に実施した「携帯電話利用の実態調査」において、面白い結果が得られました。「良く利用する」と答えたのが、日本の高校生では48%にも達していたのに対し、フィンランドの高校生では24.4%にしか過ぎなかったのです。他者と面と向かって話すのを苦手とする日本人にとっては、どうやらスマイリーとは、電子コミュニケーションに伴いがちなノイズ(多義性→誤解)を濾過する社会的言語フィルター機能の役目をも担っているようです。ただし、多彩な漢字コードを駆使して多彩な感情を代替表現する日本式スマイリーが、海外で一般通用しないのは残念な話です。「顔文字」のユニバーサルデザイン化もある意味で今日的課題なのかもしれません。

淺間先生の最新刊
海外こころの旅物語(早稲田出版、2004年)
自文化発信のアプローチ(南雲堂、2005年)
人間理解の座標軸(学術出版会、2005年)

2006年11月24日 掲載


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