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言外の意味の面白さ

澤田治美(関西外国語大学教授)

 私たちは、ともすれば、辞書と文法さえあれば、文の意味はわかると思いがちです。では、次の例はどうでしょうか。

  (1) Only John voted for John.(John=John)
  (2) Only John voted for himself.(John=himself)

(1)の場合、「ジョンに投票したのは、ジョンだけだった。すなわち、ジョンには1票しか入らなくて、その1票はジョンが自分に入れたものだった」と解釈できます。なるほど(2)の場合でも、ジョンは自分自身に票を投じたと解釈できますが、しかし、この場合、ジョンは満票で当選したこともあり得ます。そして、「他の人はみな投票用紙に自分以外の人の名前を書いたが、ジョンだけは自分の名前を書いた」わけです。それゆえ、(1)と(2)は全く同じではありません。

 なぜ、こうした意味の違いが出てくるのでしょうか。こうした意味の違いは、vote for=「〜に投票する」を知っていただけでは、うまく説明できません。なぜなら、意味には、「言外の意味」があるからです。言外の意味とは、隠れた次元の意味です。

 では、次の例の「言外の意味」とは何でしょうか。

  (3) 太郎は東京はおろか静岡にも辿り着けなかった。

この例で興味深いことは、太郎は、西から東に(たとえば東海道新幹線で大阪から東京に)移動しているということです。話し手の視点は、西から東に向いており、東京は静岡よりも遠くに位置しているという捉え方がなされています。こうした「言外の意味」も、「辿り着く」の意味からは出てきません。

 私にとって「言外の意味」が興味深いのは、言葉を通して、人による「認知」、「思考」、そして「コミュニケーション」とは何かを考えるうえで、それがとても興味深いヒントを与えてくれるからです。

澤田治美先生の最新刊

2007年2月16日 掲載


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