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「暗記する英文法」から「考える英文法」へ

柏野健次(大阪樟蔭女子大学教授)

 中学・高校の生徒が英文法を学習する際、理由も分からず丸暗記させられる項目が数多くある。私について言えば、私は中学のとき(1960年代前半)に「playの目的語に楽器(piano)がくる場合にはtheをつけて、スポーツ(golf)がくるとtheはつけない」と教わった。また、「must notは『…してはいけない』という意味を表し、don’t have toは『…しなくてもいい』という意味を表す」とも習った。これらはともに正しいが、誰もどうしてそうなるのかについては教えてくれなかった。

 最初の例は、「楽器は具体的な形のある物であるのに対してスポーツは抽象的なルールの集合体で実体がない」という点から説明できる。pianoでは、a pianoという言い方が可能であるが、ネイティブ・スピーカーはa pianoという表現を聞くと、瞬間的に一つのピアノを思い浮かべ、その場にピアノが存在するというふうに解釈するという。これはかなり具体性をもった解釈と言える。逆に「毎日ピアノを弾く」とか「ピアノが弾ける」というような習慣や能力を表す場合にはピアノの個としての具体的なイメージが薄れるため、*I play a piano every day. とか*I can play a piano. とは言えず、総称[対立]を表すtheを用いて、I play the piano every day. やI can play the piano. のように言って個別性を消し去る必要がある。

 このような過程を経て、play the pianoという表現が生まれてくるのである。したがって、本来的に *a golfとは言えないgolfでは *play the golfも容認されないことになる。

 二つ目の例は「notのかかる位置が違う」という点から説明できる。専門的に言うと、 You must not go. はYou must [not go]. と分析され、命題否定(It is necessary for you not to go.)であるのに対してYou don’t have to go. はYou [don’t have to] go. と分析され、法性否定(It is not necessary for you to go.)なのである。生徒には、これを「must notは『…しないことが要求されている』ことから『してはいけない』という意味になり、don’t have toは『…することが要求されていない』ことから『しなくてもいい』という意味になる」と解説すれば生徒も理解した上で覚えられるのではないだろうか。

柏野健次先生の最新刊

2007年2月23日 掲載


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